コロナ禍とアトキンソン理論。

秋休みで神戸帰省。
このタイミングで行きたかったところに向かうというのが今回の目的なのですが、その目的の一つが、以前よりお世話になっている研究会のセミナー。
 
経済産業省の方をお迎えして中小企業の動向や今後の方向性などをお伺いすることができました。
そんな今回のセミナー。
2つの点について改めて考えさせられました。
 
その1.コロナ禍。
今年の流行語にもなりそうなこの言葉。
世界中で大きな影響を与えていることもあり、世間では未曾有の大災害のように扱われていますが、よくよく過去のデータを紐解いてみると、
 
・今まで感染症パンデミックなどはたくさんあった。
リーマンショック等の金融恐慌よりは経済に深刻な影響は与えていない。
(すでに回復基調に乗り出している?)
 
そしてコロナ倒産は確かに多くなっていますが、本当にコロナのせいで倒産したのか?
コロナは単なるきっかけでそもそも経営基盤があぶなかったところが倒産したのであって、実は企業の新陳代謝を促しているのでは?、と最近考えています。
 
実際にコロナ禍は悪いことばかりではなく、新たな需要を掘り起こしていることも事実です。
ZOOMなどのオンライン会議ツールはコロナがなければここまで大きな市場になっているはことなかったと思います。
菅総理大臣になってからデジタル化に舵を切りはじめていますが、少なくともコロナ禍もその後押しをしているのではないか、そんな気がします。
単に「コロナで業績が落ちた…もうどうしようもない…」と思うのではなく「コロナでどんなニーズの変化が起きたのか、それに自社の商品・サービスにどう活かせるか?」と考えられるかが企業が生き残るか否か、と思います。
 
その考えを表してくれた、今回のセミナーで出たキーワードが「ダイナミック・ケイパビリティ」。
企業変革力と翻訳されるこの言葉は「不確実性が高まっている現代社会の中で、いかに状況を見極めて自身を変えていける能力」といった意味でしょうか。
この力ってとても大事なのではないか?
 
コロナ以外にも地震や風水害、法令やモラル違反による世間の厳しい目など、何がきっかけで企業が傾くかわからない世の中になっています。
こういった時代だからこそ、普段から様々なことを想定し、どう乗り切るかという想像力、判断力は必要なのかな、と思います。
(それを一緒に探してあげられるような支援ができればなぁ・・・)
 
その2.アトキンソン理論。
先日の日記で書いた「日本の労働生産性は低すぎる! これからは中小企業の数を減らしてもっと生産性を向上させるべき!」というデービット・アトキンソンさん理論。
この話をした時はあまり現実味がなかったのですが、このアトキンソン理論を支持しているとされる菅さんの総理就任で一挙に注目されているようで、うちの社長も「今後の動向は必ず確認するように」と言われているほど。
 
中小企業支援機関にとっては「中小企業の数が減る→存在意義が問われる」ということで、社内では危機感をもっている人もいるようですが、前回の日記に書いてあった通り「自分で努力をしない企業を手助けする必要はあるのか?」という考えはいまだ頭の中に残っています。
また、このセミナーにいらっしゃった中小企業の経営者の方が「中小企業が多いと大企業への営業の時に不要な価格競争が発生するから、中小企業の数は減らした方がいい」というご意見もあったりしました。
 
とはいえ、なんかこのアトキンソン理論は少し違和感があって気持ちが悪かったのですが、その違和感の正体の末端が出てきたように思います。
それは「経済の多様性」という問題。
 
そもそも日本経済は様々な中小企業がそれぞれ強みのある技術を伸ばし、それを組み合わせることによって高度な製品を生み出してきたからこそ発展してきたのではないか。
だから数を減らすということはその強みの源泉を失っていく可能性があるのでは?と思います。
また、会社の規模が大きくなるということは、その分様々なリスクに晒されることになります。
先述しましたが、ただでさえ先行きが読めない世の中、何かのきっかけで独占的な技術を持っている企業がなくなってしまった場合、産業に大きなダメージを与えてしまう可能性があります。
企業数を減らすことは社会活動におけるリスクが上がってしまうのではないでしょうか。
 
また、アトキンソンさんは「中小企業を減らすことで失業者は増えるが、その分大企業は人手不足になるから仕事がなくなることはない」とも言っていますが、ただ「失業した中小企業の正社員を大企業が正社員として採用するか」という問題が発生します。おそらく今の流れだと景気に合わせて調整が聞きやすい非正規雇用での採用になると思います。
正規雇用のすべてがダメというつもりはありませんが、一般的な話で考えると、正社員と比べて生活はかなり不安定になる可能性があります。
これで生活が不安定な人が増えていくと、結果的には日本全体の経済力に大きな影響を与えるのでは?という気がしています。
 
私の理想的な解決方法としては、自分の力で何とかできる企業の割合を増やして、「自助・共助・公助」がバランスよく効果を発揮できる政策があればいいのになぁ…と青臭いことを思ってしまいました(笑)
 
そんなことを考えさせてくれた今回のセミナー。
自分の中でもやもやしていたものを少し晴らすことができ、よい休日になりました。